2007-09-20
詳細を書くエネルギーはないのですが、「ICC」で行われた、坂本龍一さんと高谷史郎さんのコラボレーションによるライブのことを、書き残しておきたいと思います。
ひじょーに!この日は体調が悪かったのに、このライブ(?)の間は、不思議なことに、体調不良がなかったかのような気分になりました(=^ ^=)
こういうエネルギーをいただけるイベントなら、幾つあってもいい!というくらい、素晴らしいものでした。
不思議でどこか神秘的でもあり美しくも畏れを覚えるような……、久し振りに、いえ、初めての体験をこのイベントは与えてくれました。
本当は写真を撮ってはいけないし、撮る必要もなかったと今は思うのですが、もう撮ってしまったものは仕方がない、というわけで、写真もアップしておきます♪
* * *
会場には不思議な平たい水槽のようなものが吊り下げられており、実際、そこには水が容れられている。
そして、その水槽のようなものに、スモークが流れたり止まったりし、上の天井からはモニターで、そこに映像を映し出せるようになっている。
言葉で書いても分かりにくいが、写真を見ていただければ少しはその感じがつかめるのではないかと思う。
静かで暗い部屋(会場)に通されて、座ってその不思議な物体にを見上げ、床に映し出される何とも形容しがたい、つかみどころのない映像──それは最初、水とスモークが床でゆらゆらと揺れているだけのものだったが──を見る。
金属音を思わせる神秘的な音が、既に、会場中を包んで響いていた。
※金属音というのは、面白いことに、世界的にみても宗教的儀式に頻繁に使われる。
かつて、中上健次さんが坂本さんのことを、幾度も「金属神の巫女」(だったかな?)と言って、坂本さんを困らせていたことを思い出す。坂本さんは、宗教的に解釈されることを、ものすごく嫌がる人のようなので……。
スピーカーの配置や水槽の配置も、計算されていたのだろう、とてもよく響くとともに、やわらかな音だった。
後でよく見ると、水槽に向けてスピーカーらしきものが設置されていたので、恐らく、音に合わせて水も一緒に揺れる仕組みになっていたのではないかと思う。
この緻密に計算された設計と、計算外の出来事を総合した現象が、このライブなのだな、と思った。
坂本さんは、様々な緩やかに揺れる音と、水槽を使った映像とをあやつって、賢治的な世界という訳ではないが、幻想四次とでも呼びたくなるような世界を喚んできたようだ。
時折、胸を突かれるような音や映像もあって、過激な静けさと言ってもいいような出来事だった。
過激な静けさに満ちたライブは、静かに始まり、静かに終わった。終わったことに気づかないくらいに。
最後に残っていたのは、静かなノイズ(と呼んでおこう。)
ノイズというのは、実は、僕たちにとってとても身近な、友人でもある音だ。自然の音はノイズだから。
現代音楽(クラシックの世界で言われるような)は終焉したと言われ、ロックもポップスもいつか終わりの日が来るのではないだろうか、と僕は思っていたが、このような人が存在する間は、音楽に終わりはないと確信した。
こんなに訳の分からないことをする人たちがいるのだと知ったのは、僕にとって素晴らしい出来事だった。
分からないことっていいなあと思った。
分かることもいいなあと思うけれど、本当の本当に分かることとは?という問いは、人間には最後まで分からないだろう。人間が分かるのは、必ず条件付きのことなのだから。
知れば知るほど、知らないことが多くなる。
知識は<作業仮説>の域を遂には出ないのかもしれない。
分かったと思っていることは全て条件付きのこと……。
分からないことの恐さと心地よさ。驚きとともにやってくる、不思議な気分たち。それはこうした人工的な揺れでも可能なのだ。
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